(3) 最初は小さい規模で始めよう

一般社団法人産業サポート白河 相談員 佐川盟子

規模を抑えることで起業コストも抑える

 一般社団法人産業サポート白河の佐川盟子と申します。今回は起業時の事業規模についてお伝えします。
 個人事業としての独立開業や法人としての起業を決めたときから、あなたは経営者です。利益が出れば事業を続けられますが、安定した黒字化までには時間が掛かるもの。身の丈に合った事業規模と資金計画を立てる必要があります。起業コスト(開業資金・運転資金)を抑えるためにも最初は小さい規模から始めましょう。
 その際、特に意識すべきコストは固定費です。これは事務所や店舗などの家賃、従業員やアルバイトを雇うための人件費のように、売上の変化に関わりなく定期的に一定額を支払う費用のことです。起業時には、この固定費を抑えることが重要です。事務所や店舗は「多少立地がよくない物件も検討」「補助金が出る空き店舗やチャレンジショップから始める」「自宅を事務所に」といった選択肢まで考えるなど、まずは固定費を抑える方法を検討してみてください。

起業コスト算出前に自己資金を確認しよう

 事業内容にもよりますが、想定される起業コストは家賃、改装費・設備費、人件費、広告宣伝費、仕入れ費、税金・保険料などです。計画段階で起業コストを算出する前には、起業に使える自己資金の確認が必要です。まず保有する預貯金、株式や自動車などの資産と収入予定の合計を算出し、そこから当面の生活費、返済中のローン、支払予定の保険や税など支出予定の合計を引きます。そこで残った金額が、起業に使える資金です。
 自己資金で足りない場合は、借入などで調達する必要があります。創業融資を行っている金融機関の審査では「見積金額が過大になっていないか」「設備計画は適正な内容であるか」「売上とのバランスはいいか」「創業後の運転資金は十分確保されているか」などが重視されます。立派な設備での大規模な事業では必要な資金もリスクも大きくなるため、小さく始める方が成功率も高まるのです。

困難を乗り越える気持ちが事業を育てる

 「最初は小さい規模で始めよう」と提言しましたが、たとえ小規模でも、商品やサービスがお客様に選ばれなければ事業は失敗してしまいます。その際には商品やサービスをもう一度磨き上げる、原材料を見直す、ターゲットを見直す、オペレーションを見直す、宣伝方法を見直す…といった点を常に検証しながら事業を育てていくことが必要でしょう。場合によっては、このコラム(2)「市場や生の声に触れてニーズを知ろう」まで戻って軌道修正し、小さく再始動すべきかもしれません。
 このサイトにも掲載されている「着物リメイクMANA」末廣景子さんも、創業当初はチャレンジショップで事業に取り組まれていました。そういった時代を経て、現在は白河市内の店舗で営業中です。
 事業は小さい規模から始めるべきですが、困難を乗り越える気持ちを保ち続けて取り組むことも大切です。あなたらしさを失わず、事業を大きく育てていってください。

 

起業アドバイザーのプロフィール

  • 氏名:佐川盟子(さがわめいこ)
    (JBIA認定インキュベーションマネジャー)
  • 所属等:一般社団法人産業サポート白河 相談員
  • 支援可能な地域:主に県南地域
  • 参考:
    一般社団法人産業サポート白河 https://sangyo-support.jp
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