(2) 市場や生の声に触れてニーズを知ろう
福島駅西口インキュベートルーム インキュベーションマネジャー 相馬由寛
ネット情報だけでなく、リアルの声も大事
福島駅西口インキュベートルームの相馬由寛です。私からは市場を知る重要性についてお話しします。
ビジネスでも経営でも「これをやったらうまくいく」という絶対解はありません。調査ではいろんな切り口でとことん調べることが大切でしょう。ネットで得られる情報だけでなく、実際にビジネスに取り組んでいる方やサービス利用者のリアルの声など、簡単に表には出てこない情報にも価値があると思います。
一般的には「狙っている市場にどれほどの規模があるのか」「その市場は導入期、成長期、成熟期、衰退期のどの段階にあるのか」「その市場に影響を与える経済情勢、人口動態、社会文化、技術革新、法規制などの外部要因の動向」などが調査対象になるでしょうか。
ここで紹介したいのが、顧客・競合・自社の関係性を判断する「3C分析」です。市場調査では市場・顧客を分析して競合動向を把握し、それに対して自社がどうするか整理していくのがよいでしょう。
無料で使えるシステムやSNSを生かそう
ネットを活用するなら、政府系のシステムやポータルサイトなどを使って無料で一般的な市場データを抽出することもできます。例えば「RESAS」で福島市の人口構成推移のグラフを生成したり「V-RESAS」で県内の惣菜・弁当の売行グラフを生成したりすることも可能です。「jSTAT MAP」では、とある町の人口マップ(2020年の国勢調査がベース)を生成できます。地域を特定した人口の推移、人口密度、特定商品の売上高動向なども調べられるのです。
●地域経済分析システム
「RESAS」https://resas.go.jp/
「V-RESAS」https://v-resas.go.jp/
●政府統計ポータルサイト
「e-stat」https://www.e-stat.go.jp/
「jSTAT MAP」https://www.e-stat.go.jp/gis/gislp/
SNS活用については、ターゲット顧客となりえる方の発信などから競合他社の商品・サービスのどんな点に魅力を感じているのかを調べるのがよいでしょう。ハッシュタグやキーワードなどで検索してもいいでしょうし、競合他社の商品・サービスに対するコメントや評価なども参考になると思います。
PDCAの高速回転を繰り返すことが重要
市場調査や情報収集を行う一方で、やはり起業動機も大切だと思います。その点で参考になるのが、このサイトでも紹介されているシニアリンク・コミュニケーション株式会社の事例です。
遠藤社長は祖母が介護状態になり、近くの美容室や商店へ行けなくなった姿に直面されました。その経験から高齢者施設を訪問し、外出が難しい高齢者にもおしゃれを楽しんでもらおうと衣類販売や理美容事業を展開しています。
このほかイチゴの産地宮城県山元町の震災復興を掲げ、1粒1,000円の「ミガキイチゴ」で有名な株式会社GRAの創業者の岩佐大輝さんに勉強会の講師をお願いしたことがあります。
岩佐さんは事前の市場調査でイチゴの市場規模が1,800億円と大きく、景気の影響を受けにくいことを把握し、全国の優れたイチゴ農家もほぼ回ったそうです。そのうえで「成功する法則はないが、唯一近いのがPDCAの高速回転をひたすら繰り返すことだ」とおっしゃっていました。
起業アドバイザーのプロフィール
- 氏名:相馬由寛(ソウマヨシヒロ)
- 所属等:福島駅西口インキュベートルーム・インキュベーションマネジャー
- 支援可能な地域:福島市、県北地域を中心とした県内全域
- 実績等:福島商工会議所で14年間、地域活性化や経営支援業務に従事。福島商工会議所青年部事務局として、ふくしま屋台村の設立や運営などを経験。その後、経営指導員として中小企業相談所にて経営支援、創業支援業務等を担当。2015年4月に中小企業診断士として独立後、福島駅西口インキュベートルーム、福島市チェンバおおまちチャレンジショップ、各種創業スクール・セミナーにおける創業支援業務のほか、福島県産業振興センター登録専門家、中小機構東北本部アドバイザーとして、福島県内の中小企業支援を担当し、これまで1,000人以上の起業家・経営者のサポートを行っている。
- 所有資格:経済産業大臣登録中小企業診断士、JBIA認定シニアインキュベーションマネジャー、経営学修士(MBA)
福島駅西口インキュベートルームスタッフ紹介 https://www.incu.jp/staffs
福島県中小企業診断協会会員紹介 https://www.f-smeca.com/member/864.html