(3) どんな事業で起業するか決めよう(後編)
いわき産業創造館創業者支援室(インキュベートルーム) インキュベーションマネージャー 佐藤直美
自分がやりたいことを事業化すべき
いわき産業創造館創業者支援室の佐藤直美です。前回に引き続き、私からもどんな事業で起業するか決める際に心掛けたいことをお伝えします。初回では起業前に成功例を集めることの大切さを伝えましたが、どんな事業でも大切なのは「既存のビジネスとどのように差別化するか」ということ。たとえばラーメン屋を開業するなら、既存店とまったく同じ物を作っても勝負になりません。味、提供方法、ターゲットなど何かしら差別化しないと新たに始める意味がないのです。
また今回のテーマ「どんな事業で起業するか決めよう」については、個人的に自分がやりたいことを選ぶべきだと思います。「自分でもできそう」「儲かりそう」「世の中に求められている」といった観点も大切ですが、結局やりたいことでなければ情熱が続きません。よく「やりたいことが見えている人は全体の2割」と言われますが、実際に起業まで進むのは全体の3~4%ほどではないかと感じます。
やりたいこと探しのコツは自己分析
ただこのやりたいことやアイデアを事業化することこそ、起業において最も難しい点かと思います。自分が考えたことや感じている疑問を解決していくには、不足しているスキルやリソースをどのように埋めていくのか道筋を付けることも必要でしょう。
起業相談に対応していると「この形で実現できそうですか」と質問されることもありますが、できそうかどうかで迷ううちはまだ実現しにくい段階ではないでしょうか。そんなときには、なぜその事業に取り組むのか再度考えていただくなど、その事業を立ち上げる理由や覚悟について見詰め直すよう促しています。本当にやりたいことが見付からなかったり取り組むべき理由が見出せなかったりする場合は、もっと深く自分自身を掘り下げることが必要。ときには人生の棚卸まで行って「これができれば死んでもいい」と思えること、そう思えるだけの理由を見付けるべきだと思います。
相談先では起業者の本気を見ている
私は金融機関の顧問も務めているため、資金提供の立場から起業に関わることもあります。金融機関では起業者に起業理由や事業計画などを確認しますが、そういった場では計画内容より覚悟のほどを見定めている傾向が強いと思います。そこで「儲かりそう」「いま流行している」「いまの会社を辞めたいから」といった理由が返ってきても起業者の本気が見えません。しかし「昔からの夢なので何とか実現させたい」といった思いが感じられれば、話は違ってくるのです。
また今後どんな分野で起業すべきかについては、農業や食などに興味を覚えますね。日本は食糧自給率が低いと言われますが、それだけに何かしら改善すべき点があるはず。農業プラス何か…といった形でいまの世の中にあった形を実現できれば、大きく伸びるのではなでしょうか。関連事例から何かヒントがつかめるかもしれません。
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起業アドバイザーのプロフィール
- 氏名:佐藤直美(サトウナオミ)
(JBIA認定シニアインキュベーションマネージャー) - 所属等:いわきリエゾンオフィス企業組合副理事長、特定非営利活動法人ITCふくしま副理事長、いわき産業創造館創業者支援室(インキュベートルーム)インキュベーションマネージャー、有限会社インキューブ代表など
- 支援可能な地域:いわき市を中心とした県内全域