(4) 実践と検証を素早く反復

南相馬インキュベートコンソーシアム 次長 田中章広

起業時の事前準備は入念に、実行は迅速に

 南相馬インキュベートコンソーシアムの田中章広です。私からは事業開始後における実践と検証の重要性についてお話ししましょう。
 そもそもの話ですが、事業を始める際にはその準備に一定の時間を掛けるべきだと思います。法人を設立する場合と個人事業で開業する場合の違いもありますが、どちらにしても拙速に起業することは避けた方がいいでしょう。
 当然のことながら起業前には事業計画立案が重要となります。とりわけ資金計画などはしっかり検討すべきです。目の前の開業準備だけではなく、少なくとも3~5年後、できれば10年後までの計画を立案できればベストです。不安やリスクを少しでも低減しながら納得できる事業計画を立案するには、関係者と何度も協議したり相談窓口で確認したりすることになると思います。
 事前の準備は入念に行い、実行に際してはスピード感を持って当たることが大切でしょう。

失敗したら事業計画やPDCAの見直しを

 いざ起業することになったとしても、事業がスムーズに進むことはまずありません。何かしら見落としや見込み違いなどが発生し、トラブルにつながることも少なくないのです。
 事業がうまくいかない例は多々ありますが、販売面でよく見られるのが事業者のサービスがニーズに合っていない、環境に合っていない、価格設定や販売手法および接客に問題がある、商品のよさや魅力が伝わっていない…といった点です。その際には自身のサービスや商品が状況に合っているのかを見直すことが大切でしょう。
 またコスト面なら、業務の簡素化に取り組んだり作業のムダを洗い出して除外したりすることで改善が図れます。こういった場合には、事業計画やPDCAサイクルでの見直しが重要となります。商品やサービスのクオリティー向上と合わせ、マーケティングの手法も取り入れて見直すこともポイントでしょう。

実践と検証には具体的な目標設定が重要

 どんな事業でも継続するには絶えず改善することが必要です。そのためには実践と検証を繰り返し、PDCAサイクルを回すことが不可欠です。課題を分析し、目標をできるだけ明確かつ具体的に設定することが大切なのです。
 また改善点を短期面と長期面で分け、改善内容をリスト化して実行するのも有効です。定期的な検証も必要ですが、その際の評価基準も明確にしておくと達成度合いを把握しやすくなります。
 PDCAサイクルを根付かせるには、改善の目標や内容を記載した表やマニュアルを作ることも効果的です。グループウェアなどを活用すれば、関係者にも共有しやすくなるでしょう。
 最後に実践と検証を重ねてこられた企業として、株式会社GNSと株式会社スペースエンターテインメントラボラトリーを紹介しておきます。前者は地元密着姿勢やブランディングでも参考になる事例です。後者はものづくり姿勢やチャレンジ精神についても学べる点が大きいと思います。

 

起業アドバイザーのプロフィール

  • 氏名:田中章広(タナカアキヒロ)
  • 所属等:南相馬インキュベートコンソーシアム 次長
  • 支援可能な地域:相双地域
  • 実績等:商社勤務、大手フランチャイズ店勤務、NPO法人での活動経験を経て、2004年に人材支援分野で創業。2012年には地元有志とともにITコンソーシアムを創設し、代表として地域のITエンジニア育成と事業運営に携わる。JBIA認定取得後、地域の起業相談活動においては主としてサービス業分野の起業支援や法人設立支援に従事するとともに、2013年度には福島県被災地創業支援事業事務局として起業者への補助事業を担当。一方、自身の営業経験を基に地元企業や学校でビジネスマナー、コミュニケーションスキルの指導にも取り組む。現在は「南相馬市産業創造センター」次長として入居企業支援に関わるほか、経済産業省委託事業「ふくしまみらいチャレンジプロジェクト」に推進メンバーとして参画し、被災12市町村内事業者への6次化支援(商品開発、販路開拓)業務も行う。
  • 資格等:JBIA認定インキュベーションマネージャー
田中章広さん