きよミルクに懸けた夢
あだたらのちち株式会社 代表取締役 千葉清美 さん
第6回 千葉清美さんに学ぶ
たくさんの気付きをありがとうございます!(エピローグ)
前回で千葉清美さんの起業ストーリーは一応の終結です。もちろん、千葉さん自身が日々事業を拡大していますから、いつかその先をご報告できる日が来ると思いますので楽しみにしてください。
そこで、今回は千葉さんにお話を伺ってきた中であげられた、「起業者が陥りやすいワナ」についてご紹介したいと思います。「これから起業しよう」「何かやってみたい」と思っている人にはとても参考になる(というか、この内のいくつかには必ず出くわす)ことです。多くの起業家は自分の失敗の経験を公表したりはしないのですが、今回は快くご了承をいただけたので、千葉さんに感謝しつつご紹介いたします。
題して「千葉さんのしくじり先生シリーズ」
①泥棒に入られた。
事業が有名になり、マスコミの取材などメディアに取り上げられると、「とても儲かっている」と思われるものです。スタートしたばかりの起業者がそんなに儲かっている訳ではないのですが、メディアに露出すると、人はそれを記憶し良からぬモノも寄ってきます。千葉さんは2階の鍵が開いていたことで泥棒被害に遭ったそうです。事務所などに大金は絶対に置かないこと。事務所のセキュリティはプロに見てもらいましょう。
また、近寄ってくるのは「広告という名前の詐欺まがいな業者」「怪しげな経営コンサルタント」「一緒に事業しませんかという変な人からの誘い」。手を変え品を変えてやってきます。
②開業して2年で既に工場が手狭。
急いで事業をスタートせず事業計画をキチンと作ること。確かに最初は分からないことも多いので、そこはできるだけ余裕を持って始められるような準備が必要ですね。千葉さんは、工場の敷地に生乳を配送する車が停められないため、ご自分で取りに行っている状況です。
③牛さんクッキー事件。
きよミルクの原料になる生乳でクッキーを焼いて、ソフトクリームに添えようとした事がありました。クッキーを焼くのにわざわざ生乳を使う必要などありません。私が自分のセミナーで「宅配焼肉屋」というケーススタディで挙げる「宅配なのに松坂牛みたいに良い肉を使う意味がない」事例と同類です。物事の本質を見誤り、商品価値がどこにあるかを勘違いしてしまった事件。幸い、途中で頓挫して終わりました。
④変なコンサルタントに騙され無駄な支出をしてしまう。
私が千葉さんと出会う前、千葉さんが教わったコンサルタントに問題がありました。話を聞いてもよく分からない。経営の基礎的なことを訊ねても何も回答してくれない。しかも叱られる。二言目には「ペルソナ」を考えろと言われる。千葉さんにすぐに関係を切ってもらいましたが、安くない授業料でした。「起業者」になった時点で、色々な法律が守ってくれる「消費者」ではなくなります。事業を行う者同士は「平等」で「対等」です。いつまでも消費者の気分でいると大切な資金がなくなります。
⑤きよミルクが無くなるんじゃないかと心配になった。
きよミルクの人気が出ると、きよミルクを扱いたいというお店が増えてきます。千葉さんは「そこのお店で売る分の材料が無くなっては大変だ!」と、きよミルクの材料の大増産を計画しますが、フタを開けて見ると計画倒れでした。もし万が一、そこで売るきよミルクがなくなった時は「好評につき売り切れました」で良いんです。なぜなら、きよミルクは他では売っていないからです。起業して初めの内は、過剰に供給して無駄にすること、即ち「儲けることよりも損をしないこと」を考えましょう。
⑥事業上で関わる○○さんが別人だ。
世の中には色々と変な人がいます。普通にお付き合いをしている分には表面上の付き合いですから、人の本質的な違いは表に出てきません。ところがこれが事業となれば、意見や考え方をぶつけ合わなければなりません。元来、人は一人ずつ違う存在。その人と折り合いをつけて上手くやっていけるかどうかは初見ではわかりません。大抵の入社面接で応募者の本質を見抜けないのと同様です。私は、まずは小さな仕事を一緒に行うことから始めます。その中で考え方や優先順序、言っていることとやっていることの差分等を確認してから「組めるかどうか」を考えるようにしています。
何か腑に落ちないことがある方、もしかしたら私が今その状態なのかな?という方は、いつでも御連絡・御相談ください。私共の施設は福島県が設置しているインキュベート施設であり、相談窓口ですので、県内どこからのご相談も対応いたします。また、相談において料金などは発生しません。
支援者の顔
- 氏名: 新城榮一(シンジョウエイイチ)
(JBIA認定シニアインキュベーションマネーシャー) - 所属等: 福島駅西口インキュベートルーム 統括マネージャー
- 支援可能な地域: 県内全域
- 実績等:自身が多くの起業体験・企業経営を行っており、だからこそできる“知見深く論理的で活きたアドバイス”が支援している企業の事業継続と成長を促してきた。
これまでに東北大学大学院経済学研究科特任准教授、福島県立医科大学復興推進課経営アドバイザーなどを務め、現在は(一社)日本ビジネス・インキュベート協会(JBIA)
理事・事務局長に就任している。創業・ベンチャー国民フォーラムJapan Venture Awards 2008起業支援家部門奨励賞受賞。第1回スタートアップ・アドバイザー・アワード審査委員特別賞受賞。 - 参考: 福島駅西口インキュベートルーム https://incu.jp/
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