きよミルクに懸けた夢
あだたらのちち株式会社 代表取締役 千葉清美 さん
第3回 千葉清美、いよいよ起業する!
長い準備期間を経て(最初に思い立ってから6年も過ぎました)、いよいよ千葉さんは起業します。2019年1月に念願の会社を設立します。
資本金は500万円。200万円を千葉さん自身が、残りの300万円は知り合いの方が善意で出資をしてくれました。
そこからは大忙しです。工場の改装を終えて、ソフトクリーム製造の機械を搬入し、原料となる生乳(せいにゅう)の手配とすべてを一人で切り回さなければなりません。
当初の千葉さんのビジネスモデルは「工場で、きよミルクの原料(ソフトクリームミックス)を製造し、それを各地の物産館や道の駅、サービスエリアなどに販売。現地でソフトクリームメーカーできよミルクとして完成させて販売してもらおう。」というモデル、いわゆるBtoBです。なお、現在は工場できよミルクとして完成させて販売もしています。
居住地でもある大玉村の直販所で販売してもらえることになり、3月28日から事業がスタートします。でも大玉村の直販所には既にソフトクリーム販売の大手2社が陣取っていました。ここと競争しどちらにも勝たなければ生き残れません。
千葉さんはゴールデンウイークには無償で調理場にお手伝いに入り、お店の方にきよミルクの販売への理解・協力を求めます。
きよミルクの一番の特徴かつ、「売り」でもある無添加。ソフトクリームであれば必ずと言って良い位使われている安定剤・乳化剤を使用していませんので、ソフトクリームが溶けやすく、お店の方のウケはあまり良くありません。要は扱いにくいのです。
千葉さんは特徴を書いたPOPを創り、消費者に理解を求めました。どうしてきよミルクがすぐに溶けてしまうのか。どうして無添加のソフトクリームにこだわったのか。きよミルクの「売り」が分かるように説明しました。
千葉さんの熱のこもった直接の訴えにより、少しずつ認知が高まり、一口食べたら違いが分かるきよミルクの味に、リピーターや評判を聞きつけた方が指名買いするようになります。
そうなるとお店の方でも「きよミルクは売りにくい」とも言っておられず、積極的に販売してくれるようになり、秋口には「もう、きよミルクしかソフトクリームは売れないよ。」と言われるほどの人気となります。
支援者の一言
良く言われる言葉にBtoBとBtoCがあります。
BはBusiness。BtoBは企業同士のやり取りですね。
CはConsumer。消費者です。BtoCは最終ユーザーへ商品やサービスを提供する形です。例えば農家が自分で作った米を農協に販売すればBtoBですが、知り合いに直接販売すればBtoCになります。提供する商品やサービスの違いではなく、提供の仕方で分けます。
個人的には、一般的に、創業間もない時はBtoBモデルが有利と考えています。
創業間もない時期は売上額も大きくない代わりに、すべてを創業者が一人で行わなければならない場合が多く、不特定多数の顧客を掴まえなければならないことが多いBtoCモデルに対応できなくなるからです。
それを補うのが「継続反復」の仕組みをビジネスのどこかに組み込むことです。居酒屋やカフェの常連さん向けサービスや回数券サービス。多くのサブスクリプション(期間内など定額サービス)。健康食品等の定期購入割引サービス。これらは全て「継続反復」をビジネスの中に組み込むことに繋がっています。
支援者の顔
- 氏名: 新城榮一(シンジョウエイイチ)
(JBIA認定シニアインキュベーションマネーシャー) - 所属等: 福島駅西口インキュベートルーム 統括マネージャー
- 支援可能な地域: 県内全域
- 実績等:自身が多くの起業体験・企業経営を行っており、だからこそできる“知見深く論理的で活きたアドバイス”が支援している企業の事業継続と成長を促してきた。
これまでに東北大学大学院経済学研究科特任准教授、福島県立医科大学復興推進課経営アドバイザーなどを務め、現在は(一社)日本ビジネス・インキュベート協会(JBIA)理事・事務局長に就任している。創業・ベンチャー国民フォーラムJapan Venture Awards 2008起業支援家部門奨励賞受賞。第1回スタートアップ・アドバイザー・アワード審査委員特別賞受賞。 - 参考: 福島駅西口インキュベートルーム https://incu.jp/
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