きよミルクに懸けた夢
あだたらのちち株式会社 代表取締役 千葉清美 さん
第1回 千葉清美、突然起業を思い立つ(1)
本稿では、一人の起業家が起業を志し、苦労を重ねながら起業に至り、更に努力の末に事業を軌道に乗せる姿を追いかけてみようと思います。
その中で、初期段階の起業者に共通の課題や、よくある「ヤッチマッタ」話などを通して、これから起業を目指す方達が出遭いがちな課題や悩み、失敗の落とし穴を共有することで、これから起業を目指す多くの方に役立つ記事としていきたいと考えています。
まず、2019年度のふくしまベンチャーアワードの最優秀賞に選ばれ、今年1月には福島民報社のふくしま産業賞を受賞し、工場兼お店の前には今や行列もできるというソフトクリーム製造販売業「あだたらのちち株式会社」の千葉清美さんを追いかけます。
千葉さんは1965年、神奈川県横浜市生まれ。そのまま同地で育ち、測定機器などを製造する会社に就職。花のOL時代に今のご主人と出会い(出会ってしまい)結婚。2005年、ふとしたことでご主人が福島県内の会社に転職し、これまで縁のなかった福島県に移住しました。
1年後には大玉村に自宅(憧れのログハウス)を建て、大好きな大玉村の自然の中での生活を始めました。何よりもこのログハウスから見える田園風景が気に入ったそうです。
順風満帆な生活が一変したのが2011年の東日本大震災及び原子力災害。福島県産の野菜や牛乳が風評被害で売れない。それに伴って地域の中でも農業や酪農などを辞める人が続出しました。
その後、目に飛び込んできたのがソーラーパネルの海。「宝物の田園がなくなってしまう!」という危機感が、まず第一の起業への動機づけになったそうです。
千葉さんは考えました。「地域で生産された生乳や野菜で、たくさんの人に食べてもらえる商品を造れば、田園を残せるのではないか?」
支援者の一言
このように地域などの社会的な課題を解決したいとして起業される方が近年増えており、特に東日本大震災以降は顕著に感じます。ソーシャルベンチャーとか社会起業家とか呼ばれる人たちです。
この方たちの特徴は「目的は決まっているけれど、そこに至る道筋が立っていない」という共通点があります。
私どもではこれを「ドラえもん型起業」と呼んでいます。「こんなこといいな できたらいいな あんな夢 こんな夢 いっぱいあるけど」そこまで。その夢に至る設計図がない場合が非常に多いのです。
そして「お金」の優先順位が低いというのも共通する特徴です。熱意があり余るために、利益のことを考えずに突っ走る。そんな起業者、周りにいませんか?
第2回へ続く…
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