正直、若い女性とお話しする機会がほとんどないので、取材前は、はたして話が通じるかどうか不安でしたが、向こうから次々と話題を攻め込んでくる方で、話の方向を調整したり、スピードに付いていくのがやっとでした。
　こんな娘がいたら良いなと思わせる、「人としての温かさ」を感じました。

Q：まず、プロフィールを教えてください。

　1999年(平成11年)北海道生まれのいわき市育ちで、父が日本人、母がタイ人のハーフです。東日本大震災後にタイのソンクラーという町の中学校・高校に通い、大学に進学しようと思った時に、エンジニアになってものづくりをしたいという思いで、帰国して会津大学に進学しました。
　大学では「医療×IT」を勉強しました。(陳文西教授の研究室に在籍 https://bitlab.u-aizu.ac.jp/)

Q：会社を創ろうと思ったのはなぜですか？

　修士の1年生の時、世間は新型コロナウイルス感染症の真っただ中。大学も完全にオンラインになってしまい、イベントも何もない。あってもオンライン。
　そんな中で入ってきた学生も３年間友達ができない。友達と交流もできない。将来に関して話す場もない。そんな状況でした。
　私自身も人と会わないでいると、時間の感覚がおかしくなったり、身だしなみを気にしなくなったり、社会性が失われていくのを感じました。
　それで、マッチングサービスができるアプリ開発を始めることにしました。でも、マッチングサービスを行うのは、かなりハードルが高く、システムのセキュリティやらプライバシー保護への対応を厳格にしないといけません。
　それをきちんとやっていくのには「同好会」や「サークル」ではまずいだろう、ということで株式会社を設立しました。思い立ったのが2021年1月。会社設立したのがその年の12月です。

Q：起業に当たって相談した人などはいますか？

　私は、ハッカソン(※)や、ものづくりコンテストなどに出ていまして、そのような場で経営者の方たちとのネットワークができていました。向こうは「大学生のお姉ちゃん」位に思っていたと思うので、何の隠し事もなく話をしていただけて、有益な情報を吸収しました。
　また相談しようと思った際、相談先には困りませんでした(笑)
　
※ハッカソンは、ハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語とされ、 プログラマーや設計者などのソフトウェア開発の関係者が、一定期間に集中的にアイディアを出し合い開発作業を行うイベントを指します。

Q：今、行っている事業はどのようなものですか？

　学生向けのコミュニティアプリの運営をしています。(https://splannt.com/intro)
　大学の学生みんなに公開したい情報を載せています。現在は会津大学生のみですが、パッケージ化して他の大学で使ってもらうことも考えています。
　今までのSNSは、SNS内で会って仲良くなってコミュニティができてくるというイメージですが、これは大学に入った時からもう存在していて、そこに入れば誰かしらと繋がれる。元々コミュニティが有るので、そこに入れば良い。そんなアプリです。
　ただ現実的には、これはまだマネタイズできていなくて、ビジネスとしてはアプリの受託生産をしています。
　ウチの技術者は基本的には学生ですが、学生も大学ではできない体験を会社でできているようで、地域との交流ができるのを喜んでもらえています。

Q：将来の目標などはいかがですか？

　私は「若者のキッカケ創り」をしたい。今はたくさんのサービスや情報が溢れていて、若い子達はその中で情報やサービスに圧し潰されそうになっていると感じます。何を選んで良いのかわからなくなっている。
　そんな中で若者がチャレンジできる地域を創りたい。生きてて良かったと思える人生を送って欲しい。そんなことに寄与できる仕事をして行きたいと思っています。