親の働く姿に影響を受けて歩み始めた飲食業の道
縁や環境を大切にしながら開業した
「Sourire339〜ちいさな蔵の蔵出しエクレア専門店〜」
オーナー 中澤美咲さん
福島市出身の中澤美咲さんは2022年2月、市内に「Sourire(スリール)339〜ちいさな蔵の蔵出しエクレア専門店〜」をオープンさせました。
もともと料理や飲食の道で働こうと考えていたそうですが、仙台市の専門学校卒業後に福島市へ戻って洋菓子店に就職。5年間働いて技術を磨いた後、満を辞して独立開業したそうです。
その原動力となったのは、言うまでもなくスイーツ作りへの情熱。しかしまわりの人々によるサポートや家族が飲食業に関わっている環境が、大きな後押しとなりました。
起業への熱い気持ちとともに、家族、就職先、先輩、同級生、ご近所など、さまざまな縁を大切にしてきたという中澤さん。創業への道のりについて話を聞きました。
Q:オープンにいたった経緯や起業時に役立ったことを教えてください。
料理や飲食の道に進みたいと考え始めたのは、お店を営んだり接客に関わっていたりしていた家族の影響です。具体的には中学校を卒業後、福島市内にある高校の食物系学科へ進学。そこから仙台市の農業・調理系の専門学校へ進み、卒業後は福島市に戻って洋菓子店に就職しました。
洋菓子店では入った当初から「将来は独立してお店を持ちたい」と社長に伝えていましたが「最低3年は修行しよう」と計画。そんな中で同級生の独立を目の当たりにしたんです。その姿に刺激を受け、4年目にあらためて社長へ「独立したい」と告げました。
それからの1年間は、社長からさらに幅広い技術を教えていただいたり引き継ぎを行ったりする日々。前職の洋菓子店では5年にわたり、さまざまなことを学ばせていただきました。
その後は準備期間を経て2022年2月14日に当店をオープン。きっかけは父の営むつけ麺店でした。お店の裏に蔵があるんですが、その建物を改装してエクレア専門店に。外観は和菓子屋のような雰囲気ですが、こう見えて洋菓子店なんです!
独立時に役立ったのは、まわりの人々からのアドバイスでした。前職の社長、すでに起業していた先輩、つけ麺店を営む家族など、いろんな方からさまざまな助言をいただいたんです。
社長は一見怖そうな雰囲気ですが、聞けば細かく教えてくださる方。いまも何かあれば相談し、うまくいかない原因や対策などを教えていただいています。思い通りの品を形にするにはレシピだけ見ていても不十分です。社長には材料の分量、温度や湿度、季節と天候、火加減、加工時の手癖など、幅広い観点からアドバイスをいただいています。仕入先も紹介していただきましたが、ゼロから探すのは大変なので本当に助かりました。
独立していた先輩や同級生からは、同じような立場で相談に乗っていただきました。また両親には新商品のアイデアだけでなく、起業時の資金面でも助けられています。起業に対しても特にあれこれ言われることはありませんでしたね。
資金面では父が融資を受けていた福島銀行さんを紹介していただき、いろいろ調べていただけました。また福銀さんを通じ、日本政策金融公庫さんも紹介していただけることに。福銀さん、公庫さんからは補助制度や助成金などの情報をいただけたんです。
私にはそういった伝手があったので苦労も少なかったのではないかと思います。自分でゼロから調べる場合、難しい資料などを読み込まなくてはなりません。そういったことが得意ではないので、まわりの人々によるサポートや家族が飲食業に関わっている環境には感謝しています。
私の場合は起業時も周囲に相談して助けられました。見知った方に伺うお話の方が分かりやすく、受け入れやすいのではないかと感じます。
Q:エクレア専門店を始めたことには、どういった理由があるのでしょうか。
独立時に「エクレア専門店を始めよう!」と思ったのは、それまで福島県内に見当たらなかったからです。また座って食べなければならない物より、食べ歩きできる物の方が購入しやすいのではないかと考えました。
こだわっていることのひとつに、果物は地元産の物を使うということがあります。イチゴ、モモ、ブドウ、リンゴのほか、サツマイモなどを使うことも。たまたま隣の農家の方が栽培されていたので、使わせていただけることになったんです。起業についてはこういったラッキーなご縁にも恵まれました。
このほか当店の特徴としては、ひかえ目な甘さで作っていることも挙げられます。家族みなさんで味わってほしいのに、1人だけ食べられないのも残念。甘い物が苦手でも男性の方でも家族と一緒に楽しめるよう、味については細かく調整しています。
Q:事業に取り組むうえでのモチベーションや今後の計画について教えてください。
毎日のモチベーションとなっているのが、お客様に「美味しい!」と言っていただけることです。ショーケースをご覧いただくこと、召し上がっていただいてまたご来店いただくこと、友人知人に持って行っていただくことなどが何よりのやり甲斐となっています。
先日いらっしゃった男性からは「受験勉強をがんばっている娘が食べたいというので」とのお話を伺いました。努力する娘さんとその娘さんを思う男性の気持ちに触れ、温かい気持ちになりました。
今後に向けては、もっと商品バリエーションを増やしたいと考えています。エクレア専門店ですが、誕生日用などアニバーサリーケーキにも対応。ゆくゆくはケーキ類も店内に並べたいですね。お客様の喜びの場に当店の商品があるというシーンが理想的。当店の商品だからこそ求められるというシチュエーションを想像しながら活動していきたいです。
Q:これから起業したいという方に向けてアドバイスをお願いします。
飲食に携わる仕事では、自分で考えて作った物を「美味しい!」と言っていただけることが一番の喜びではないかと思います。雇用されているときはなかなか自分のアイデアを形にする機会に恵まれませんでしたが、独立するとその機会も一気に増加。お客様に向けた心の込め方も変わってくるはずです。
起業して事業を続けていくには、相応のエネルギーが必要です。起業前にはいろいろやってみたいことが思い浮かぶでしょうが、結局好きなことでないと長く続けられないのではないかと感じます。
しかしそういった情熱が欠かせない半面、周囲の理解も同じくらい大切です。私の場合は両親が飲食業を営んでいたことで独立への理解が得られ、母や妹にも手伝ってもらえました。加えて前職の社長、近所の農家さん、先輩や同級生にもさまざまな形でお世話になっています。今後もそういった、まわりの人々とのつながりを大切にしながら活動していきたいです。
Sourire(スリール)339
住所:福島県福島市上鳥渡字土手内31-2
TEL:024-563-7205
営業時間:10:00〜18:00(商品がなくなり次第終了)
充電日:毎週木曜日、第1・第3金曜日
- Instagram: https://www.instagram.com/sourire339/
取材者の声
- 氏名: 渡辺明美(ワタナベアケミ)
- 所属等: ふくしま女性起業家活躍推進協議会 副会長
(一般社団法人アイプロデュース 代表理事)
知人のお土産でエクレアの美味しさは体感済みでしたが、店舗には初訪問となりました!中澤オーナーは両親が飲食業を営んでいたこともあり、学生時代から事業者としての振る舞いに触れられる環境にあったのでしょう。商売と縁遠い方の場合、お客様に「いらっしゃいませ」と声を掛けることさえ難しいものです。また情熱だけで突っ走るのでなく、まわりの人々とのつながりを大切にしながら起業した姿勢も見習うべき点ではないかと感じました。
起業に興味のある方はこちらの情報もチェック!
- 創業イベント・セミナー: https://f-bizsta.jp/event/
- 助成・補助金・融資制度: https://f-bizsta.jp/subsidy/
- インキュベート施設: https://f-bizsta.jp/incubation/