目に見えないAI技術を誰もが便利に使える形で提供する
株式会社AIBOD 代表取締役社長 松尾久人さん
これを読んでいる方も耳にしたことがあるかもしれません。「福島イノベーション・コースト構想」。東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトで、ロボット、エネルギー、廃炉、農林水産等の重点6分野におけるプロジェクトの具体化を進めるというものです。
今年6月待ちに待った特定復興再生拠点の避難指示が解除された大熊町。その復興の要となる「大熊インキュベーションセンター」に入居されている株式会社AIBODの松尾社長にお話を伺いました。株式会社AIBODの本社は福岡市にありますが、なぜ大熊町へ来ることになったのでしょうか?
Q:最初に会社の概要と、松尾社長がなぜこの事業をはじめようとなったのかを教えてください。
私は1972年生まれで今年は人生100年の折返しの年です。福岡市出身で、九州大学で情報工学を修め、日本アイ・ビー・エム株式会社に就職し、ハードウェア技術者として神奈川の開発部門に配属されました。
16年勤めた後、九州大学でスタートする国家プロジェクトに参画することになり、生まれ育った福岡の地に転職しました。
プロジェクトはIT基盤の次世代スマートシティの設計と実装だったのですが、先端技術をどうやったら社会に役立つ形で提供できるか、そのベースを創っていくような内容です。
しかし、この構想を実現するにあたり、大学でできることに限界を感じて2016年にこのAIBODという会社を創って起業しました。
Q:なぜ、大熊町に拠点を置いたのですか?
キッカケは福島県が実施する「Fukushima Tech Create」というスタートアップ支援のプログラムがあるという情報が入ってきたことですかね。それも自分の人的ネットワークから入ってきた話で、チャンスと思い、応募したんです。
当初はコロナにより対面での参加ができなかったためリモート参加だったのですが、繋がっていれば情報も密に入ってきます。そこで震災からの復興への社会課題として、小売の可能性を考えました。その中で相双地域の自治体に積極的に提案をしたのですが、今から本格的なまちづくりを行う大熊町に共感をいただき、連携協定締結、そしてインキュベーション入居につながりました。
Q:すべてが「これから」の町で大変では?
そこが良かったんです。ゼロからスタートする地域だから白い紙に絵が描けるんです。私がやってきたのは次世代の社会システムの実装ですから、既存の地域のどこかを修正したりするよりは、まったく新しいところから設計した方がより自由度が高く、その意味では今年から復興が始まるというこのタイミングがベストだと感じました。
Q:実際に大熊町に来ていかがですか?
今は月のうち半分が福岡本社など九州で、残りの半分が大熊町の生活です。
課題は移動に時間が掛かることですかね。色々と試行錯誤しましたがやはり片道6時間位は掛かってしまいます。福島用の社用車を導入しましたので、ここまで来れば地域内は車で動けますが、ここまでは飛行機と電車か高速バスで、接続も決して良くないんですね。この辺が改良されたら最高ですね。
Q:製品やビジネスモデルはなかなか説明が難しいかもしれませんね。
私達の商品は色々ありますが、福島でまず展開していて、分かりやすいのは「BAITEN STAND」でしょうか。これはバーコード無しでカメラで商品を認識して価格を表示し、買い物ができます。人が少ない地方では、費用は重要なポイントです。最先端のAIを、安いマシンでも使えるように製品を仕上げています。
現在のところ、買い物カゴから商品を一個一個取り出してカメラの下におくことが必要なので、大量購入するようなスーパーへの対応は今後の課題ですが、少量の買い物をする環境、例えばこの大熊インキュベーションセンターの売店などには最適です。「10個入りの小分けのお菓子をバラして1個づつ売る」なんてこともできます。システムの価格も構成機器はとても安価です。
(https://youtu.be/PMiZLzbIV5Uで松尾社長のプレゼンが視聴できます)
Q:将来の目標は?
「先端技術を役に立つもの、便利なものとして提供する。実用化する。」というのが私たちのすべきことだと思っています。その意味ではこれから数多くの挑戦すべきテーマが溢れて来ると思います。それにチャレンジするのが我々だと考えています。
技術そのものではなく、技術によって社会をより良く変えることが目標です。
Q:最後にこれから起業する人に一言お願いします。
起業することは誰でもできます。ただし、そこから売れるものを創っていくのが難しいんです。「やりとげる勇気」を持ってください。「本当にこれがやりたいのか?」何度でも自問してください。
それからトップ(経営者)は動き回ること。下手に考えこめば負のスパイラルに陥ります。動くことで局面を打開すること。そして人に会うこと!
株式会社AIBOD
住所:
(本社)福岡県福岡市中央区大名1-8-7 スタープライスビル7F
(大熊町)大熊町下野上清水230 「大熊インキュベーションセンター」
TEL:092-982-6090
問い合わせ時間:平日10:00~18:00
ホームページ:https://www.aibod.com/
問い合わせ:上記ホームページの問い合わせページより
取材者の声
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最初は「技術」の人なのだと思ったのですが、完全に「ビジネス」の方でした。
「技術はビジネスを裏打ちするもので、技術を社会に役に立つ形で、コストや安全性を含めて提供しなければならない。」という固い信念を感じました。
震災から11年。ゼロから待望の復興スタートを切る大熊町に、頼もしい力強い存在が加わったと感じました
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