仲間とともに大好きな四駆車に関わろうと起業
売って終わりでなく交わり続ける関係づくりに努力
自動車販売店 オートモービルストアアニュ
オーナー 斎藤なつみさん

前職の同僚とともに自動車販売店を開業した斎藤なつみさん

 今回ご紹介するのは、福島市で自動車販売店「オートモービルストアアニュ」を立ち上げた斎藤なつみさん。別の自動車販売店でともに働いていた同僚と独立開業するという、珍しいケースの創業者です。
 もともと事業主になる予定ではなかったそうですが、助成制度の手続きをきっかけに本気で新事業と向き合うことになりました。
 気心知れた同僚たちがいたものの、前職を退いてから4カ月での立ち上げには大慌てだった様子。車のプロであることに加え、経営者としてのキャリアもスタートさせた斎藤さんに創業の経緯などを尋ねました。

オートモービルストアアニュが手掛けているキッチンカー
Q:はじめに主なプロフィールを教えてください。

 福島市内の高校を卒業後、仙台市の専門学校に進学。ただ専門学校は中退してしまい、地元に戻ってきた後は通信制大学に入り直しました。学んでいたのはスポーツ系の保育についてでした。その後、昼は福島市内の学童保育スタッフとして、夜は福島駅前のスポーツバーでアルバイトをするようになったんです。当時は人と関わる職場で働きたいと思っていました。

 そんな中、スポーツバーからは「正社員にならないか」と誘われ、働くことについていろいろ考えるようになりました。その状況で気になっていたのが、当時目にした中古車販売店です。そこは大好きな四駆車がずらっと並ぶようなお店。スタッフ募集も出ていないのに電話してみたところ「ちょうどホームページを担当してくれる人がいたらいいなと考えていた」とのことで採用されることになりました。
 働き始めた当初は何でも任されましたね。整備こそできないものの、接客、洗車、車検の受付など幅広い業務を経験させていただきました。その後、お店の経理も私が担当することになりました。ありがたいことに、そのお陰で中古車販売店の仕事をゼロから覚えられたのだと思います。

Q:起業したのはいつごろになるのでしょうか。

 2021年の8月8日付で開業届けを提出しています。実際にオープンしたのは11月1日。以前の販売店を退職したのが6月末だったので、創業時は本当に慌ただしく動いていました。
 当社のスタッフは全員、前職の自動車販売店で一緒に働いていた同僚になります。みんなで一緒に抜けてきた形になりますね。私以外のスタッフは3人。前職で店長だった男性と、私と同い年の男性と、板金塗装担当の男性です。起業のきっかけになったのが前職で店長だった男性。当時の上司だったのですが、会社の方針と考えが合わず退職することに。店長には本当にお世話になったため、私も辞めることにしたんです。ちなみに前職では就職、結婚、出産、離婚、退職まで経験することになり、店長にはそんな慌ただしい時期に支えていただきました。
 私の少し前にも同い年の男性が辞めているんですが、元店長と2人で創業しようか相談しているとなぜかその男性も参加することに。そしてもう1人、以前の職場にいた板金塗装スタッフの男性も一緒に働いています。
 もともと一緒に独立するために辞めた訳ではないのですが、勢いに任せていろいろ進めてきた形。「勢いって大事だな」と実感しています。

電気関係以外はほぼ自分たちでリフォームしたという店内
Q:事業計画はどのように作成したのでしょうか。また資金はどのように用意しましたか。

 事業計画書の作成は、それほど苦になりませんでした。もともと自分の頭の中にあるものを文章にすることが好きなんです。ただ母には目を通してもらい、おかしいところがないかチェックしてもらいました。両親が教員で母の専門が国語だったので、その点では助かりましたね。
 事業内容については特に悩むことなく、中古車の整備や販売に決められました。お金については悩んでいたときに、うちの元店長が役立ちそうな助成制度を発見。悩んでいる時間もないので、ひとまず日本政策金融公庫さんに聞きに行こうということになりました。

 公庫さんに紹介していただいたのが、福島市で設けている助成制度。女性なら起業時に2年間無利子になるという内容でした。別なところに相談したときにもその制度について質問したんですが、担当者には「女性向け無利子助成だけを目当てに未経験事業を始めても難しいのでは?」と指摘されることに。逆に私はこの言葉で気持ちに火が付き、起業に対して本気になれたんです。公庫さんへの相談時であれば、元店長が社長になる流れだったと思います。しかし結果的に私が本気になって起業することになったため、この言葉がいいきっかけになったのかもしれません。当社男性スタッフのみんなも私の気持ちを汲んで後押ししてくれたので、オーナーとして挑戦することになりました。

ともに起業した仲間たちとは本気でぶつかり合える関係性

 このほか兄が銀行員ということもあり、準備期間中に地元銀行の創業塾にも参加しています。お金を借りる際の計算方法、さまざまな補助金制度などについて学ぶことができました。
 このほか同業者の方からは福島信用金庫さんを紹介していただきました。信金さんに相談したところ、公庫さんにも間に入っていただいて両者で細かい相談や調整が行われた様子。最終的には日本政策金融公庫さんと福島信用金庫さんから、協調融資で資金を借りることができました。
 優しく対応していただけた信金さん、間に入っていただけた公庫さんには本当に感謝しています!

Q:取り組んでいる事業について教えてください。

 新車と中古車とを問わず自動車販売に取り組んでいます。車検や点検と、それにともなう車の整備、板金塗装にも自社で対応。自動車保険も取り扱っています。事業の中心となっているのは移動販売車やキッチンカーの販売で、コロナ禍になってからはあちこちで需要があるようです。
 心掛けているのは車を作って売って終わりでなく、その後も長くフォローできるような関係づくり。キッチンかーを使った販売促進情報なども提供することでお客様の力になれたらと考えています。具体的には、こんなPOPを作ったら売れ行きがよくなったとか、どういったイベントではどんな商品が売れたかとか、どういったキッチンカーが便利で使いやすいのか…といったアドバイスを送ることが多いですね。
 いまは自動車販売業に取り組んでいますが、店内では車にちなんだ雑貨や子ども用衣料なども販売。車載家具のオーダーメイドや取り付けなどにも対応しています。将来的には子どもたちに関わる学童保育的なことにも取り組んでみたいですね。キッチンカーを使った、移動式の子ども食堂などにも挑戦してみたいです。そういった形でシングル家庭や子育てをサポートし、もっと世の中のお母さんや女性たちが活躍できる環境づくりに貢献できればと思います。

オートモービルストアアニュ

住所:福島県福島市二子塚字針下駄75-2
TEL:024-563-3395
FAX:024-563-3391
問い合わせ:info@ams-anu.com

外観

取材者の声

  • 氏名: 渡辺明美(ワタナベアケミ)
  • 所属等: ふくしま女性起業家活躍推進協議会 副会長
        (一般社団法人アイプロデュース 代表理事)

斎藤代表のひと言ひと言からは、本人の情熱や誠実さが伝わってきました。周囲の方が応援したくなるような人物であることも分かる気がします。創業時には「何でも自分でやらないと!」と気負ってしまいがちですが、頼れる先には知恵や力を借りることも必要です。男性創業者の場合もこういった傾向が見られるので、斎藤オーナーのインタビューをぜひ参考にしていただきたいと思います。

ふくしま女性起業家活躍推進協議会副会長 渡辺明美

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