「関わる皆(みんな)が幸せな起業を目指して」 
焼き芋 陽(はる) 宮田 陽子さん

毎日完売する宮田さんの焼き芋

最近多い、起業される方の特徴として、社会的な課題、今の言葉で言えばSDGs(持続可能な開発目標)に関わる事業を目指される方が多くなってきているように感じます。
会津坂下町で起業した「焼き芋 陽(はる)」の宮田陽子さんもそんな一人。
長年、御主人と二人三脚で「美容師」として美容院に関わって来られた宮田さん。そんな彼女がなぜ突然、焼き芋屋さんを始めたのか?その辺を掘っていくと、起業することで地域の課題を解決しようという試みであることがわかりました。

夏場に大好評の冷やし焼き芋
Q:オープンして2週間。売れ行きはいかがですか?

ありがたいことに、毎日完売です。焼き芋は1日60本と本数を決めています。11時開店なのですが、開店時には行列を作ってお待ちいただいていて、昼過ぎには完売。他との差別が図れる特徴をと思って始めた「冷やし焼き芋」や、「芋羊羹」、「芋プリン」も夕方には概ね完売します。

Q:そもそもどうして焼き芋屋さん?

もう20年以上、地域(会津坂下町)で主人と美容室を切り盛りしてきました。順番をお待ちの御客様に何か出せないか?と思うようになり、17年前から冬になると焼き芋を焼いて出すようにしてみました。
そしたら、妙に評判が良くて、翌年になると「今年の焼き芋はまだなの?」とリクエストをいただくようになったのです。それで、年々改良を重ね、そんなに評価してもらえるならば、ビジネスになるかなと思ったのです。
もう1つは、去年から新型コロナウイルスがまん延したこともありますね。お客様も少なくなって。そうあればもう1つ、生きていくための柱を立ててみてはどうかと思いました。
それで去年は、1年を通して焼き芋屋さんをやってみたのです。夏場は“売り”になっている「冷やし焼き芋」や「焼き芋かき氷」も創作しました。お客様に食べていただいて改良を重ねるというのを1年間やったのです。

メディアの取材を受ける宮田さん
Q:起業しようとして悩んだことはありますか?

そうですね。「やろう」と決めるまでは思いっきり悩みました。それなりにお金も借りないといけないですし、果たして返せるのかと。そんな時に地元の金融機関の創業塾がありまして、去年の11月から今年初めまで受け、修了するころには「やる」と決めていました。
私は「やる」となったら「やる」人なので、主人とあちこちの店を見に行き、焼き芋に関わらずテイクアウトの店に実際に行って勉強したりもしました。インターネットがありますから店の外観などはわかりますが、どういう手順で商品を販売しているのかなど、実際に行かないとわからないことが多かったです。これは勉強になりましたし、自信にもなりました。その結果、今のスタイルになったのです。

Q:県の補助事業(地域課題解決型起業補助金)の採択を受けています。どういった地域課題があり、それをどうやって解決しようと思いましたか?

会津坂下町も高齢化と人口減少が進んでいます。ここは商店街なのですが、閉店する店舗が多くシャッター通りが現実化しています。今までにない「焼き芋専門店」を出店することで地域の活気を取り戻したいと思いました。
それと雇用の場を創りたいと思いました。スタッフが自分の生活を大事にできる、働く人がみんな幸せになれる職場を創りたいと思ったのです。

Q:県の起業向け補助金は中々競争率が高いとお聞きします。提案、申請に当たって工夫した点などがあれば教えてください。

これは主人が頑張りました。主人も美容師ですが、経営の勉強をきちんとしたことはなかったのです。それで一念発起して地元の会津大学短期大学部に社会人入学して勉強しました。パッケージデザインやロゴなども大学の協力で制作しました。

宮田さんが掲げる経営理念
Q:掲げられている経営理念に目が留まります

はい。食べ物を扱う商売ですから、関わる皆さんが笑顔になって欲しいです。お客様は勿論ですが、スタッフも私達夫婦も。お客様からは「売れるのだからもっとドンドン作ればいいのに」とも言われますが、焼き芋を一日60本と決めているのには訳があります。販売数を増やそうとすると営業時間ギリギリまで販売したりするようになります。そこから後片付けだとスタッフの帰る時刻も遅くなります。スタッフには子育て中の女性もいますから、そうなれば今度は家族や子供が笑顔をなくしてしまいます。それは望んでいません。沢山バンバン売ることよりも、地域の方に喜んでもらえて、長い間続く事業にして行きたいのです。

Q:これから起業しようとする皆様に激励の一言をお願いします

60歳になる私にも起業出来たので、誰でもできると思います。まずは一歩踏み出して行動しましょう!きっと何かが変わります。

焼き芋 陽(はる)

住所:福島県会津坂下町市中四番甲3796 (諏訪神社前)
問い合わせ:070-4073-7486
営業時間:11:00~なくなるまで
定休日:月曜日

焼き芋 陽(はる)

取材者の声

  • 毎日午前11時に店頭前に行列ができる様子は、会津坂下町の新名物になりそうです。
    原料の仕込みから全国を廻って調べ抜いたという起業者御夫婦の長年の研究の賜物だと感じます。名物の焼き芋、冷やし焼き芋にどうしても目が行きますが、是非試して頂きたいのが、焼き芋プリンと焼き芋羊羹。どちらも焼き芋で甘みを出しており、他では食べられないスイーツです。
  • 【地域課題解決型起業補助金について】
    募集が始まると福島県産業振興センターに詳細が表示されます。
    令和4年度以降の実施は未定ですが、令和3年度までは概ね6月半ば位からの募集開始でした。

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