株式会社GNS 常務取締役 廣田ひろた 拓也たくやさん

福島にUターンし、「えごま油」の事業化に奔走

株式会社GNSでは、「農と食を通じて生産者の再生産を支援する」という企業理念の基、国産のえごまや穀物の生産管理、加工、農産加工品の小分けなどを行っています。商品の企画やデザインも自社で行うだけでなく、自社グループに飲食・物販事業を行う会社も抱えていることで、生産・加工・流通・飲食・小売・企画・デザインを自社グループ内で一貫して行える体制が強みです。
常務取締役の廣田さんは、大学を卒業後、東証一部上場のシステムメーカーに勤務。計数管理やハードのメンテナンス、営業などを経験しました。
出身地でもある二本松市東和地区に耕作放棄地が多数存在している現状をどうにかしたいという思いから、廣田さんは、お兄さんが一足先に始めていた「えごま」の栽培を広める事業に合流。えごまが選ばれた理由は、体によい上に、福島の土地で昔盛んに栽培されていたからでした。
始めは生産者を確保するために苦労したと言います。当時は日本ではえごまを育てている農家は珍しかったため、栽培ノウハウも知られておらず、収穫がなかなか安定しなかったのです。「春には作付けの説明会を行い、夏に栽培指導会、秋に収穫説明会を行うというフローを通して、自分でも農作業に参加して農家さんと密にコュニケーションを取りました」。3年目に思ったように収穫できなかったときには、農家から諦めの声も上がりましたが、「もう1回やりましょう」とお願いをして、種を蒔き続けました。アジアの中でもえごまを多く産していて、栽培指導も盛んに行われている韓国などにも出向き、生産のコツをマニュアル化。4年目には収穫が安定してきました。「最初は3人の農家さんからスタートしたえごまの栽培でしたが、口コミで賛同者が増え、震災前までの6年間で登録は220人に増えました」

「コトづくり」を商品化し、手作りサングリアキットの開発も

株式会社GNS が生産管理を取っていることで、まるで「生産者の顔が見える」かのような安心感のあるえごま油は、国産で品質のいい品物を求める消費者の心を掴み、少しずつ顧客を獲得していきました。ところが、福島第一原発の風評被害でそのビジネスモデルが崩れてしまいます。廣田さんは、打開策を探すために、バンで寝泊まりしながら、3年間で200以上の東京都内の青空市場で商品を売って廻りました。「他社の売れている商品や売れていない商品をたくさん見て、ブランディングとマーケティングを学ばなければならないと痛感しました。事業戦略を考え、『栽培して販売してまた再生産する』という流れを新しく作り直そうと思いました」
平成27年、廣田さんは「モノづくりからコトづくりへ」をコンセプトに、「既に出来上がったモノではなく作るプロセスを価値にする」体験型商品を開発。ワインを注いで初めて完成する自家製サングリアを販売したところ、年間2万本も売れたヒット商品になりました。「近年は『作って楽しむ』ことを求めている消費者が多いと実感しました。サングリアの他に、水やお酢を入れて作る『ドライベジの自家製ピクルス』などを展開しています」

 

生産者が農作物を発信できるような地域ブランドを確立したい

廣田さんが現在力を入れているのが、観光地を中心とした販路の拡大です。「平成27年度には、福島県内観光市場規模は、5千万人以上も見込まれていました。観光地というのは当然ながらアクセスがとてもいい場所。まず1ヵ所でも多くのホテルやリゾート地などに商品を置いてもらい、1人でも多くの人に見てもらうことがねらいです。平成28年には、卸し先として、15ヵ所の観光地を新規開拓できました。さらには、『福島の小さな会社がこんな面白い商品を作っているぞ』という行政の方へのアピールの場になっています」
また、観光地向けの商品として株式会社シーズコアの「日本拓景ブランド」と提供し、地域バージョンとして、ローカルブランドの先駆けとなるべく「福島拓景」を開発しました。福島の名所のイラストが書かれたパッケージに、国産や福島産の素材で作られた製品が包まれています。商品化の際には、県の6次化復興支援事業の助成金なども活用しました。
「目指しているのは、『生産者が参画できる地域ブランド作り』です。今後、福島拓景ブランドを農家さんが利用して、農作物を世の中に発信する場所にしていきたいです。農産物、加工品の受け皿を作ることを目標に、今後も新しい販売方法を開拓していきます」と語ってくれました。

 

 

株式会社GNS

  • 住 所〒964-0938 二本松市安達ヶ原5-254-12
  • T E L0243-62-2201
  • F A X0243-62-2202
  • E-mailtkyhirota@gmail.com
  • U R Lhttp://www.global-n-s.co.jp/
  • 創 業平成17年1月
  • 事業内容食品製造(搾油事業・雑穀加工業・農産物小分け事業)

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