株式会社Grune 代表取締役 山下やました 敏義としちかさん

「相馬野馬追」の存続に貢献

株式会社Grune は「相馬野馬追」の馬を生かしたシェアリングサービスを展開しています。相馬野馬追とは、1000 年以上続く伝統的な祭事です。馬を追う野馬懸、町を騎馬武者が行進する行列、そして、最終日には雲雀ヶ原祭場地に400頭強の馬が集結し、甲冑競馬と神旗争奪戦が行われます。南相馬市原町地区出身の山下さんは、そんな野馬追に幼いころから参加してきました。
しかし相馬野馬追の存続が長期的には危ぶまれるのではと言われています。最大の要因は、馬主(主に牧場)に関わる問題です。南相馬市には野馬追期間の3日間しか稼働していない馬が多く、馬を飼育するための時間や維持費の負担が大きく所有者の生活を圧迫しています。しかし、馬を有効活用するために乗馬等のサービスを提供したくても、それを各馬主が個別に提供するのは費用・人材面で非常に困難な状況です。また、馬主や牧場運営者の高齢化・後継者不足も顕在化しており、既に馬の飼育を止めた牧場も多数あります。年々、祭事のために馬を確保することが難しくなっています。
フリーのエンジニアとして様々なWebサービスの開発に携わってきた山下さんは、自らの知見を活かし、地元のお祭の存続に一役買えないかと考えていました。昨年、南相馬市小高地区で行われたハッカソンに参加。南相馬市の地域課題を解決するテーマに対し「馬のシェアリングサービス」をチームで提案し見事優勝。本提案を事業化することを決断しました。

南相馬市の資源を活用した乗馬サービスの展開

「馬のシェアリングサービス」とは、複数の牧場を取りまとめて、乗馬サービスのプロモーションや予約、決済等の業務を代行し、利用者の方と牧場を繋ぐサービスです。乗馬クラブは国内にも多数存在しますが、本サービスの一番の特徴は南相馬市の資源を強みとして生かしていることです。南相馬には多数の牧場、馬、指導者が存在し、これらを有効活用することで安価で高品質なサービスを提供することができます。山下さんは最初の取組みとして、法人向け事業の立ち上げに取り組んでいます。「本事業が本当の意味で地域のお役に立つには、持続的な発展が欠かせません。先ずは戦略的に事業立ち上げを行います。現在一番のターゲットとして考えているのは、地元の企業様です。乗馬部を設置していただき、社員様がいつでも安価に乗馬を体験できる仕組みを整えていただく様ご提案を進めています。また相馬野馬追の執行委員会と連携し、相馬野馬追への協賛の特典として、弊社の乗馬サービスを提供させていただくことも検討しています。
南相馬市には国体でも使用された本格的な乗馬施設である馬事公苑や、ビーチライディングやマウンテンライディングができる自然豊かな場所も存在します。これらの環境を活かしたオプションサービスの企画や乗馬合宿の誘致も行っていきます。また、相馬野馬追にはG1 優勝などの有名な馬も出場しており、一目見ようと追っかけの人も多数訪れていることから、馬名、性別、出生年など多彩なキーワードで検索できる機能も検討中です。さらに、外国人に人気がある甲冑も各牧場で所有されていることから、甲冑を着て乗馬できるサービスなど、多くの方が自分の好みで楽しめるような、乗馬ファンを広げる仕組み作りを行っていく予定です。

 

南相馬に若者が戻れる場所を

「福島県は東日本大震災、原発事故で大きな被害を受けてきました。依然として放射能の影響が残る中、平成28年7月に20km圏内の一部への帰宅が可能になったものの、若い世代の帰宅率は非常に低くなっています。若い世代が戻ってこなければ地域が限界集落化し、行政サービスの維持が困難になります。若者を呼び戻す、あるいは新しく招き入れることが急務です」。山下さんは事業を通してこの課題解決に取り組んでいきたいと力強く語っています。「南相馬には世界最大規模の馬の参加数を誇り、魅力ある祭りがあります。しかし、その祭りの認知度は国内外共にあまり高くありません。ここで新たな魅力ある事業を生み出し、もともと地域にいた若い世代が戻ってきたり、この街に魅力を感じた若者が新たに移住してきたりする。その正のスパイラルを生み出していくことを目標として、事業を行っています」

 

 

株式会社Grune

  • 住 所〒975-0038 南相馬市原町区日の出町182-4
  • T E L090-4726-7936
  • E-mailt-yamashita@grune.co.jp
  • 創 業平成28年11月15日
  • 事業内容相馬野馬追の馬・牧場・指導者のリソースを活用した乗馬サービス

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