(4) 事業計画を作ってみよう
社会保険労務士法人HRM総合事務所 代表社員 奥瀬円
事業計画とは事後検証のための指針
社会保険労務士法人HRM総合事務所の奥瀬円と申します。私からは起業時に最も大変と言える、事業計画についてお伝えします。
事業計画とは、できることとやりたいことを一致させ、長期にわたってぶれさせないためのものです。いわば潜在意識下にある思いを掘り下げて「私はこれがやりたかったんだ!」と言える形に明文化した指針。これまで多数の事業計画作成に関わってきましたが、対応した起業者からは「作成前には漠然としていた事業のイメージが、作成後には霧が晴れたようになった」との感想をいただいています。
事業計画を作る一番のメリットは、始めた後に細かく検証できること。どんな起業でも多少の失敗は付きものです。ただ事業計画があれば、失敗した後に原因を探ることができます。逆に事業計画がないと、頭の中で思い出しながら振り返るしかありません。事業計画とは、失敗しても改善を続けて成功を目指すための拠りどころなのです。
自分のスキルやノウハウを記そう
ただ実際に作るとなると簡単にはいきません。まず潜在意識下にある思いも含め、形にするのが難しいのです。その際には、だれかと話しながら掘り下げていくのがベター。建設業での独立を相談された際には、土木か建築かなど細かい質問を重ね、起業したい内容を絞り込んでいきました。
話すうちに起業像が見えてきたら、次はそれを紙の上に書き出します。それをPC上で文章にすれば、事業計画ができていくのです。
相談者には「文章なんて書けない」という方も多いですが、私が対応した中で最後まで書けなかった方は1人もいません!自分を信じて取り組んでください。
また作成時には、自分の知的資産を盛り込むことが大切。たとえば皇室に献上される果物の種があっても、あなたが同じ品質の果物を作れるとは限りません。果物を育てるには、栽培技術などの見えざる知的資産が重要。多少盛ったとしても、あなたが持つノウハウを強くアピールすべきだと思います。
事業計画の出来は資金面も左右する
事業計画を作るには大抵2〜3カ月掛かるもの。私もアドバイスや添削を細かく行いながら伴走しています。本人が納得できる形に仕上がった際は「たとえ補助金がもらえなくてもこの事業計画が作れたので満足です!」と話す起業者もいるほど。そんなときは審査にも通りやすく、複数受給できることも少なくないのです。
このほか起業を考え始めたら、貯金を始めることも重要です。いくら「起業したい」と言っても自己資金ゼロでは本気さが伝わらず、金融機関も融資しにくくなります。タンス預金だと記録に残らないため、金融機関を利用して金額や貯めた期間を伝えやすくしておきましょう。
起業時に大切なのは、貯金、創業セミナー受講、事業計画作成の3点です。創業セミナー情報は、ビズスタふくしまにも掲載されているのでぜひチェックを。ふくしまベンチャーアワードなど、起業コンペの入賞事例も参考になるかと思います。
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起業アドバイザーのプロフィール
- 氏名:奥瀬円(オクセマドカ)
- 所属等:社会保険労務士法人HRM総合事務所代表社員、一般社団法人福島県中小企業診断協会理事いわき支部長など
- 支援可能な地域:いわき市内および富岡町など双葉郡内
- 実績等:創業支援、事業計画書策定支援に取り組み、書類作成・提出以外にも創業後や計画書提出後の長期的な経営支援についてアドバイスを行っている。東日本大震災、2019年の台風19号、コロナ禍においては、事業者に対して各種施策を助言。事業主および従業員のメンタル面を含めた中小企業・小規模事業者のフォローにも取り組む。いわき市内における特定創業支援セミナーのメイン講師、各種補助金審査員も務め、2012年からは明治大学経営学部で「キャリア形成入門—キャリアの入り口としての資格—」の講義も行っている。
- 資格等:社会保険労務士(付記申請済)、中小企業診断士、MBA(経営学修士)