ピラティスサロン「クラーラ」
渋川晴子しぶかわはるこさん

見知らぬ土地に嫁ぎ、自分の居場所を作りたかった。
誰かに頼ることを止め、自分の事業になったとき、
信頼出来る仲間に出逢い、社会的スタンスを見つけた。

資格を取り技術力を付ければ
何とかなると思い込んでいた3年間

起業するにあたって、誰にも相談せずにスタートしました。元々持っていた理学療法士に加え、ピラティスインストラクター、整体師、パーソナルトレーナー、ドリームマップ、短期の海外留学など、とにかく技術を習得することに邁進していて、そうすることが何よりも大事で、技術力があれば売り上げにつながると信じて疑いませんでした。もちろんお金はかかりましたけど、それは先行投資で事業には必要なことだと思っていました。こうした学びは、今では貴重な資産ですが、起業当時は思惑とかなり違いました。

起業して1年。一向に伸びない売り上げに焦り

これだけ技術力を身につけて、万全の体制でスタートし、広告も定期的に出したにもかかわらず、思うような売り上げには全くつながらなかったのです。正直、焦りました。このままでは廃業・・・そんな不安を抱き、藁にもすがる思いで書籍や実業家ブログを熱心に読み、SNSで情報収集もしました。そんな時、Facebookで知り合った九州の農業系実業家と交信するようになり、オンラインコンサルティングを依頼しました。月に1回アドバイスを貰えるのですが、業種が違うので具体的なメニュー開発や資金繰りなどの話はなく、「とにかく情報発信!」の一点張り。半年もするとブログの更新が苦痛で文章が書けなくなっていました。広告も毎月出していましたが、何をどうすれば響く広告になるのか見当もつかず、ただただ掲載するだけ。掲載を中止したらもっとお客さんの足が遠のくではないかという不安で止めることも出来ませんでした。

起業3年目に出会った起業支援員が
進むべき道を示してくれた

初めてその方の存在を知った時は「起業についてアドバイスしてくれる?無料で?しかも女性?会津にこんな支援サービスがあるの?」と驚きました。聞くと、福島県が設置している起業支援施設(福島駅西口インキュベートルーム)の支援員で、わざわざ福島市まで出向かなくても会津で面会できるという事でした。面談では、事業の進捗のほか自分ができること、お客様に提供したいものなどを伝えたところ、事業維持のためにはまず収益(数字)を把握することが大事だということで、家賃光熱費はもちろんのこと、ウォーターサーバーの利用頻度に至るまで事細かに計算しました。算出された事業維持のための数字を見て、目標の売上を達成することは正直厳しいと感じましたが、その数字をクリアしないと廃業に追い込まれると理解した時、私の中で何かが変わりました。

どうしたら目標を達成できるのか、自分で考えるようになった

これまでは、何の根拠もない思い込みや、成功者(コンサルタント)や書籍、ブログに書かれていることに依存していたと思います。ブログが書けなくなった理由は、自分の言葉を持っていなかったから。つまり、事業にきちんと向き合い、自分の頭で考えていなかったのですね。「ああすれば良い。こうすれば成功する。」っていう情報を必死に集めていました。自分で考えるようになってからは、お客様をきちんと見て、研究するようになりました。アンケートを取り、お客様のファーストボイス(一言目に発した言葉)を大事にしたら、ニーズというものが見えてきました。ニーズに応えてこそ売り上げにつながることを学べたのです。そして、独りよがりや押し付けを止めて、お客様のニーズを的確に捉える努力をした結果、あの時厳しいと感じた数字をクリアすることが出来たのです。これで一安心!と思った矢先、2人目の妊娠が分かりました。

二人目の妊娠。
夫の言葉で継続を決意、新しい自分に出逢えた

ピラティスのインストラクターですから、妊娠出産時期に継続することは無理です。休業・廃業という文字が頭をよぎった時、夫に相談してみました。すると、「継続は何よりの信頼になる。」「簡単に止められるような事業なら初めからやるべきではない。」「止めるな」と叱咤激励されました。妊娠している妻にここまで強く発言する人は少ないと思いますが、夫の実家は120年続く老舗商家なのです。それ故に言葉の重みを感じました。「継続が信頼に繋がる」のだとしたら、ここで止める訳にはいかない。そう思ってピラティスインストラクターを雇用し、妊娠出産を乗り越えました。今では私も現場に出ています。無理だと思っていたことを自力でクリアしたことで、安全な場所から一歩外に出られたような感覚になりました。事業者としての自分を信じられるようになったのだと思います。この私の中の変化は、周りへの見方にも影響を及ぼしました。今、私の周りにいる仲間は信頼できる人ばかりなのです。嫁いで8年、居場所が欲しくて起業して5年、ようやく社会の中で自分の居場所(社会的スタンス)を見出すことができました。

起業して5年目に思うこと。これから起業する人へ伝えたいこと。

私の実家は自営業です。母方の祖父も自営していました。幼い頃、父や祖父のところ(事務所)に人が集まる様子を見て、事務所がお城のように感じたことを覚えています。父は「事業の成果というものは、一朝一夕に出ないものだし、良い時も悪い時もある。商売は子供を育てることにとても似ている。」と、よく言っていました。今はその言葉の意味がよく理解できます。起業し当初から上手くいくこと、仮に上手くいったとしてもずっと順風満帆でいられることは少ないと思います。立ち上げ期から軌道に乗るまでの不安や焦りというストレスは想像をはるかに超えました。この時期を極力抑えるためにも、副業からスタートすることをお勧めします。経済的な安定を得ながら、少しずつ仕事の幅を広げていく。そうして何年かやっていくうちに、お客様のニーズ、コンテンツの掘り下げ、宣伝集客の学び、人脈作りなど徐々に起業への環境が整ってくると思います。そのときに、やっぱりやりたい!と思った場合は起業にチャレンジしてみてはどうでしょうか。自分のお店を持つことや開業することは案外簡単に、誰にでもできます。それを続けていくこと、続けられるほどの商い(自分が飽きない)なのかが大事です。私はピラティスなしでは生きられないと思うほど、ピラティスが好きです。そして、失敗も貴重な経験かと思いますが、出来るかぎり短期間で回復できるように、プロの支援を積極的に受けてください。この人のようになりたいという支援員の話しを聞くことをお勧めします。プロはプロでも自分で起業していない人に相談しても理想論で現場に落とし込めません。自分で汗や涙を流して、10年続けている人に頼ってください。
私は5年後、10年後を見据えてこれからも頑張っていきます!

支援者の顔

  • 氏名: 重巣敦子(シゲスアツコ)
    (JBIA認定シニアインキュベーションマネーシャー)
  • 所属等: 福島駅西口インキュベートルーム インキュベーションマネージャー(IM)
  • 支援可能な地域: 主に県北地域、会津地域。
    (メールやSNS等での支援は全県可能)
  • 実績等: 平成28年度より経済産業省の女性起業家等支援ネットワーク構築事業で東北地域の事務局を担っており、女性起業家支援コンテストにおいて平成29年度は最優秀賞、平成30年度も優秀賞を受賞している。
    主に女性起業者の支援に定評があり、暖かく包みながらも叱咤し、起業者と共に伴走する頼りになる「姐さん」。
    自らも企業を立ち上げて起業しており、実体験に基づいた創業支援は多くのファンを持つ。
  • 参考: 福島駅西口インキュベートルーム https://incu.jp/

ピラティスサロン「クラーラ」
渋川晴子
  • 栃木県塩谷町出身 会津若松市在住
  • 2児の母(6歳、1歳)

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