「撓やか(しなやか)に 強か(したたか)に -堅実で理に適った事業構想と未来社会を見据えた目標-」
株式会社エムケー技研 諸根理仁(もろねまさひと)さん
(R3 FTCビジネスアイデアPG採択者)

会社外観(郡山地域テクノポリスものづくりインキュベーションセンター)

郡山市にある日大工学部の一角に「郡山地域テクノポリスものづくりインキュベーションセンター」があります。そこに入居する株式会社エムケー技研は2018年5月に創業した若い会社です。
しかしながら、自治体向け災害対策システムなど、先進的な開発力とそれを実現する技術力は、既に地域で高い評価を得ています。
今回は、通常はシステムの中に組み込まれることが多く、一般的にはわかり難い同社の技術を優しく教えていただきました。

Q:諸根さんのプロフィールを教えてください。

1990年田村市滝根町生まれ。日大のOBです。この大学で機械工学を学んで修士課程まで修了しました。大学では介護ロボットの眼の研究をしていました。
就職は某大手電機メーカーです。そこでリチウムイオン電池の開発をしていました。ホントはクルマが好きだったので、クルマメーカーも考えたのですが、好きなモノを仕事にしない方が良いかなと思って。そこに2年半居てから起業しました。

屋外向け定点監視システムAiMO_ため池設置の様子
Q:いわゆる研究開発系の事業だと、どうしても実際の売上が生まれるまで時間が掛かると思います。どうやって乗り越えたのですか?

う~ん。やはり最初は相当不安でした。ただ、創業初期は在学当時の先生達から色々と細かい仕事を投げてもらえました。で、色々手伝っている中で、毎年ビッグパレットで行っている県主催の「ロボットフェスタふくしま」に関わるようになり、そこで来場した企業さんから仕事の相談を頂けました。

屋外向け定点監視システムAiMO_閲覧画面
Q:ホームページを拝見しましたが、普通の人には分かり難いですよね。例えばどんなことをしていますか?

「自治体向けの防災システム」などを作っています。これはカメラと水位計を組み合わせてアラームで随時警告して行くようなシステムで、定期的に水位計が水位を測定し、ある基準を越えればアラームが鳴るというシステムと、その状況を遠隔で画像確認できるシステムです。
自治体の担当者は遠隔から現場の状況を確認できます。その結果、現場に赴いた方が良ければ現場に行くという感じです。常に現場で計測する必要もないですし、常に現場の画像を視ている必要もありません。
あと、アナログのメーターを読み取って数値をデジタル化するシステムも市内のお客様から依頼を受けて開発しました。現在でも視認で確認するような現場があるので、そういった場所での省力化に役立てていきたいです。

中小河川向け水位計
Q:将来の夢を教えてください。

福島から研究開発型の企業が沢山出てくることですね。得意分野の異なる企業がお互いの長所を持ち寄れば、より汎用性の広いシステムや、より安定的なシステムを安価に提供することができると思っています。将来的にはそんな企業を育てること自体を支援したいですね。
また、自社のシステムを全国の小規模な自治体でも導入できるように展開したいです。数があればスケールメリットも生まれますし。
防災システムで自治体の職員の方と関わるようになって、皆さん本当に大変だということが分かりました。住民からの要望はより高度かつ複雑なものになっていますし、反対に過疎化が進めば職員数が削られる。そんな中で皆さん、本当に頑張っていらっしゃる。なので、その方達を応援できるようなシステムを創っていきたいです。
多くの防災システムがパッケージ型で、開発した会社が顧客を囲い込むようなシステムであり、他社のシステムと連動させる等ができないことが多いです。これをオープンにして、様々な個々のシステムを連動させることができれば、安価に高機能なシステムを導入できると思います。

Q:これから起業しようという人に一言お願いします。

スタートアップは小さく、失敗しても生活が潰れないようにして始めることを奨めます。新しいアイディアを考えつくと、それでいけてしまいそうになって突っ走りたくなりますが、少し寝かせて冷静になった方が良いと思います。
既存の技術や他社のやっていることを見習うというか、良いことは取り入れて行く。その意味ではオリジナルに固執しなくても良いと思っています。
オリジナルは、お客様の要望を聞いているうちに自ずと生まれてきます。

株式会社エムケー技研

住所:福島県郡山市田村町徳定字中河原1-1
郡山地域テクノポリスものづくりインキュベーションセンター3号室
問い合わせ:050-2018-6162(代表)
info@mk-rd.co.jp
令和3年度「Fukushima Tech Create」の支援先企業として採択され実証に取り組んでいます。
https://www.fipo.or.jp/news/15673

代表の諸根さん

取材者の声

  • お会いした諸根社長は意外なほど若い好青年でした。一言、一言話す言葉から、その後ろ側に大きな確信や仮説を持って話しているような、将に技術系の経営者という感触でした。発する言葉は氷山の海面から上の部分で、それを支える大きな海中部分が内面に存在する様な印象です。
    何かエピソードはないかお聞きした際に、意外なお話をお聞きしました。高校で一度引き籠って、中退しているというのです。その後に大検を受けて日大に入ったとのことでした。「立ち直るのに2年かかった」という言葉の裏に、かなり深いところを体験した人の重みを感じました。
    「今は、そこでやろうと思ったら思い切ってやってみる。そこで失敗してもリスクは少ない時代だと思います。果敢にチャレンジして行きたい。」そう話す諸根社長は、外見のスマートさとは別の図太い起業家精神をお持ちだと感じました。